はやる心を押え、ミロは丁寧に愛撫を施した。 髪から端正な顔へ。耳、首筋、肩口。 乳首を舌先で転がし、腹から腰骨。 時折カミュはびくりと体を震わせた。 長く伸びた足から爪先まで、余す処なく唇を当て、舌を這わせる。 まるで肌そのものを味わっているようだった。 全身くまなく刻んだあと、ミロは最後に残った股間に顔を近づけた。 両手でそっと太腿を分けると 「…触れても…いいか?」 小さな声で尋ねる。カミュは笑った。 「そこも、君のものだ。何をためらう」 「……ん…。」 わずかに照れたような表情で、ミロはそれを起こした。 小鳥を掴むほどにゆるく握る。 まずは少しずつ、一面に口づけを与えた。ひとつひとつ、ゆっくりと。 次には舌で、これも少しずつ舐め上げる。 反応し、カミュのものに変化が現れる。 「う…」 カミュは初めて、はっきりと呻いた。ミロが先端から徐々に口へ入れていた。 舌を回し、奥まですっぽりと包み込む。口をすぼめ、喉をしめて吸い上げた。 「くう…っ!」 カミュの息が弾んでくる。 ミロは口に含んだままに、握り込んだ手を上下させた。 己れの唾液に濡れ、抵抗なく指が滑る。摩擦の痛みが生じず、カミュには快感だけが伝わっていく。 「あ…ミロ…」 眉を寄せ、カミュは自らの指を噛む。もう片手はミロの頭を押えた。 ミロは愛撫の速度を早めていく。 舌を回し、吸い上げながら深く、浅く。 その動きに合わせて指を動かしていた。 「ミ…ロ…!」 カミュが、きつくミロの髪を握った。その力で、彼を引き剥がそうとする。 「だめだ…ミロ…放してくれ…」 ミロは答えず、動作も止めない。 「やめてくれ! もう、いく…から…。君に…」 「くれればいい」 先端に唇を当てたまま、ミロが言う。 「し…しかし、それは…!」 「お前こそ何をためらう。お前の全ては俺のものだ」 「あ…」 ミロは再び口いっぱいに収め、カミュを高まりへと誘う。 カミュは目を閉じ 「……っ!!」 全身に力を張りつめ−−−やがて解いた。 ミロはカミュの足を大きく開かせ、股間に顔を埋めた。 陰嚢を舌ですくい、転がし、吸い上げる。 解き放ったカミュは、その息がおさまらぬ内に新たな刺激を与えられていく。 とがらせたミロの舌先が袋の筋を伝い、細い道を通って秘部に達した。 そのまま、くり、と舐め上げる。 「……!」 カミュは体を強張らせた。 「ミロ…!」 「感じるか」 「そんな…こと…」 後に言葉が続かない。 ミロの舌先は、促すように二、三度つついた。 「あ…! い…やだっ! ミロ…っ!!」 逃げようとする腰は、しかしぐいと引き据えられる。 「やめてくれ…。辛い…」 「辛い? 何故」 「体が…おかしくなりそうだ」 「おかしくなって見せてくれ」 「……」 「思い切り乱れて見せろよ、カミュ。俺のために。お前が…そう言った」 「……」 「お前の恥じらいも、痴態も… 全てが見たい。全てが、愛しい」 「……」 「愛している。アクエリアスのカミュ」 ミロはカミュの手に、軽く口づけた。 「…あ…はあ、ああっ!!」 カミュはもはや声を殺そうとも、抗おうともしなかった。 受けた刺激に素直に反応し、大きく体を動かす。 全身に汗を浮かべ、腹を大きく波打たせた。若い男の体臭が匂い立つ。 ミロは、殊更念入りに秘部を愛撫した。 舌を立て、中へ差し込もうとする。周囲を舐め、陰嚢を軽く揺すり、転がす。 膏油を指に取り、軽く塗りつける。 次には油をつけたままの指先を、中へ潜らせた。 「は…うっ!!」 叩きつけるように、カミュは左右へのたうつ。 ミロはその腰をしっかりととらえ、指先で入口を刺激し続けた。 「あ…。く…」 動かしながら、少しずつ中へ差し込んでいく。 カミュは額の上で拳を握り、もう片手の指を強く噛んでいた。 ミロは、カミュ自身もわずかに潤ってきたのを見て、ゆっくりと指を抜いた。膝で立ち、開いたカミュの足を抱えて自分の脇へ回す。 「入れて…いいか?」 見下ろして、尋ねた。 カミュは、わずかな明かりさえ遮るように、目前で拳を作りながらも、はっきりと頷いた。 指を入れた時同様、ミロは加減して差していく。 「何故…」 目を閉じたままのカミュが言った。 「何故そんなに優しい…? 好き勝手にむさぼるのではなかったのか」 「そのつもりだったが…」 少し、またほんの少し腰を進めながら、ミロは答える。 「お前の肌に触れる内に…大切にしてやりたいと…思った」 「…。要らぬ気遣いだ。昼間あれだけ…」 「言うな」 抱えるカミュの足に汗が巻いている。ミロの掌も、じっとりと熱い。 「ここにいるのは俺だ。俺が、お前を大切にするんだ」 「ミロ…」 開きかけたカミュの目が、またきつく閉じる。ミロはかなり深くまで入ってきていた。 「−−−動かすぞ」 根元まで収めた時、またもミロは了解を求めた。カミュは苦く笑う。 「好きにしていいと言った筈だ。それに…」 「?」 「あまり焦らされると…かえって苦しい。一気に攻められる方が…」 ミロは、はっとした。そして、こうべを垂れる。 「すまない。気づかなかった…」 生真面目な言葉に、顔を歪ませながらもカミュは笑った。 カミュの端正な顔を、幾筋もの汗が伝う。 のけぞり、大きく体を開いていた。 広くたくましい胸と、引き締まった脇腹がわずかな明かりに照らし出される。 ミロも汗を浮かべながら、激しく腰を動かしていた。 カミュの内壁にこすられる刺激と、夜具の上で乱れるカミュ自身に、高まっていく自分を強く感じる。 「あ、はあっ、はあっ、ああっ… ああ…!!」 カミュの声が途切れない。 ミロが腰を進めても引いても、首をうち振り、敷布をきつく握りしめる。 ミロはその両手を取って、それぞれに自分の腕を握らせた。 自らも同様に、カミュの手首をしっかりと掴む。そしてまた激しく突き上げた。 「あっ、ああっ!! あうっ…!!」 「……」 カミュの声が、遠い。ミロも固く目を閉じていた。 その、目の前が白くなる。急激に駆け上がるものがある。 「あ… カミ…」 「ミロ…」 二人、握り合う腕に全身の力を込めた。体は弓なりに反り、顎が思いきり上を向く。 「……っ!!」 一瞬。二人の体は静止した。 「−−−……」 そののち。糸が切れたように、その場へと倒れ伏した。 「……」 まだ息を弾ませながら、ミロはカミュに這い寄る。 気づいて薄目を開けた彼の髪を撫で、目に、頬に、口づけを与えた。 そして、改めて抱きしめる。 「愛しているよ…カミュ…」 「……」 カミュは応えるように、ミロの唇へ口づけを返した。 「−−−良い天気だ」 窓辺に立ち、昇り始めた太陽を見ながらミロが言う。 「我々の門出にふさわしい」 「……」 その後ろで寝台に座るカミュは、しかし表情が硬い。 「ミロ…」 「ん?」 「やはり…止めにしないか」 「……」 「考えると…君の負荷が大きすぎる。元はと言えば、わたしへの処罰から始まったことだ。君には何の関係もないというのに…」 「カミュ」 ミロはつかつかと歩み寄り、カミュの顎に手をかけた。そのままくいと上向かせ、唇を重ねる。 「……」 ひとしきり口づけを味わった後、言った。 「お前に堂々とこういう事が出来る。それで、十分だ」 「ミロ、しかし…」 「俺はつけ入っただけだ。お前が気に病むことは何もない」 「……」 「一度天蠍宮に戻る。あとで迎えに来るから、仕度しておけ」 そう言い、今一度唇を合わせると、ミロは宝瓶宮を後にした。 |
←HOMEへ | 小説のメニューへ | 6へ→ |
---|