「あ…はあっ… あ…あ…!!」 両腕の肘が曲がり切り、カミュは這いつくばっていた。アフロディーテの突きに、体がずるずると前にのめっていく。 「う…く…」 滴る汗が床を濡らす。足元のそれには、赤さが混ざっていた。 「…そろそろ…仕上げにしましょうか」 弾む息でアフロディーテが言い、ひときわ激しく腰を動かした。 「あ…ああっ、あっ、あうっ!!」 「いきますよカミュ。一緒に。さあ…カミュ…!」 「あ… −−−!!」 喉をしぼり上げるように、カミュが悲鳴を発した。 「……」 そして、がくりと床に崩れ落ちていった。 「…おめでとう」 そのカミュを見下ろし、肩を上下させながらアフロディーテは顔の汗を拭う。 「これで君は見事”女”となった」 「……」 「さあ皆さん。『わたし達の』カミュ殿に祝福を!」 アフロディーテが煽れば、場内から拍手と歓声が沸き、口笛が吹かれた。 「…あ…あいつら…」 ミロは固く拳を握りしめる。 「あいつら今に−−−殺してやる!!」 青ざめた顔で、ギリギリと奥歯を合わせた。 「−−−さて。お手並み拝見といきましょうか」 衣服を整え、アフロディーテはデスマスクを見やる。 「ふふん」 デスマスクは鼻を鳴らした。 「せっかくお前が道をつけてくれたのだ。使わぬ手はあるまい」 「ほ…」 デスマスクはカミュの脇腹を掴み、倒れた体を引きずり上げた。 「立てよ。まだ食い足りなかろう」 その勢いのまま自分は床に座り、膝にカミュを据えた。 足を大きく開かせ、局部を剥き出しにする。 「言っておくが、俺はアフロディーテほど優しくはない。この体、存分に使ってやる」 言いながら一度腰を持ち上げ、次には自分の股間へ突き落とした。 「あ…っ!!」 血と粘液にまみれ、まだ閉じ切らぬそこを破られた痛みに、カミュは大きく反り返る。 「俺のエナジィを感じるか? カミュ」 その耳元に言う。 片手でカミュの男根を握り、もう片方で薄桃色の乳首をつまむ。 「熱いだろう。お前の中も、十分に熱いぞ」 くく、と喉で笑う。 「さて、皆の衆」 愛撫を続けながら、デスマスクは周囲に呼びかけた。 「アクエリアスの黄金聖闘士、カミュはこのたびめでたく”女”となった。即ちこの体、ここに居る誰もが使うてよいということだ」 「……!」 どよめきが起きた。 「そこの男」 デスマスクはあばた面の、小太りの兵に言う。 「遠慮は要らぬ。カミュ殿に尽くして頂け」 「は…あの、でも…」 男は戸惑い、周りを見回す。 「どうした。黄金聖闘士の舌に悦ばせてもらえと言っているのだ」 それは許しというより強制だった。 「え…あの…そんな…」 「何だ」 「いえ…。あ…では…」 男はおずおずと裾をたぐり、晒けだした男根を手にカミュの目前に立った。 「ご…ご無礼を…」 口元に寄せる。すかさずシュラがカミュの髪を引き、横から両頬をきつく掴んだ。 「口を開けろ、”女”!」 その呼ばわりは、黄金聖闘士たる誇りと気高さを、跡形もなく吹き飛ばすものだった。 「う…」 痛みに、顎が下がっていく。その隙間に少しずつ肉棒が差し込まれていった。 男はすぐに歓喜の声を上げた。それまでの脅えは消え去り、思う様腰を使い始める。 「−−−まだ、手が空いている」 その様子を満足気に見ながら、デスマスクが言う。 「あと二人。望む者はいないか」 今度はすぐに走り寄る。一人始めれば、もう恐れはない。 「よし、一人はこっち。もう一人、反対側だ」 早くも股間を広げている男達に命ずる。シュラとアフロディーテがカミュの腕を取り、導いて握らせた。 「何と、愉快だ!」 三方での行為が始まると、デスマスクはカミュの腰を激しく上下させ、声高く笑った。 「これほど楽しい集いはないな。かような召集であれば、俺は何処にいてもかけつけるぞ!」 大広間に響き渡る笑いの中、デスマスクはカミュの体を揺さぶり続けた。 それからは入れ替わり立ち替わり、男達がカミュを責め苛んだ。 寝かせ、立たせ、這わせる。好きなように、好きなだけその体を弄ぶ。 手を休めたと言ってははたき、口での奉仕をしないと言っては殴る。そこには黄金聖闘士への畏怖も、尊敬も、遠慮も何ひとつなかった。 だが。男達が夢中で食らいつく訳も、彼が黄金聖闘士、アクエリアスのカミュであるから、に他ならない。 いつしか酒がふるまわれ、人々が宴に興じる中。 スコーピオンのミロは、ただじっと佇んでいた。 握りしめた拳からは血が滴り、純白のマントを赤く染めている。 「……」 俯く顔に影がさす。その瞳からは、とめどなく涙が落ちていく。 「ミロ…」 人々の注意が完全にそれているのを見て、アイオリアはその肩を抱いた。 「死にそうだ…」 こぼれるように、ミロが言う。 「死にそうだ、死にそうだ、死にそうだ!! 助けてくれアイオリア!!」 「ミロ」 「くやしい!! 腹立たしい!! 俺は…たまらない!!」 気づいて、アルデバランも近よる。 「ここに居る全員を八つ裂きにしてやりたい!! 八つ裂きにして、臓物を引きずり出して、蹴散らして… ああ、それでも足りない!!」 「落ち着けミロ。お前の気持ちはよくわかる」 「わかる…だと!? 何がわかるのだ アイオリア!!」 かすかに、カミュの呻きが届いた。 「本当に八つに…いや、千にでも裂きたいのは俺自身だ! どうしてだ、どうして俺はカミュを… カミュをあんな目に…!!」 顔を覆おうとする血だらけの手を止め、アイオリアは布を巻いた。 「…すまん…」 「いいさ」 また、肌を打ち据える音と罵声が聞こえた。 「−−−わたしはそろそろ失礼する」 その時、少し離れていたシャカが歩き出した。 「君達も辞したらどうだ」 「…しかし、教皇が…」 「もはや儀式でも処罰でもない。ただの乱交。見守っておらずとも、咎めはあるまい」 「…シャカ…」 去り行く背に、ミロは言った。 「お前どうして…そう平然としていられる。デスマスク達に加わるわけでもないのに…」 シャカは、フッと笑った。 「全ては、定め」 「……」 「人は流れのままに生きるもの。君とカミュがこの先生き続けていくのであれば、全ては時が解決してくれよう。もっとも…」 「?」 「流れを引き寄せなければ…ならぬこともあるがね」 それだけ言って、シャカは静かに去っていった。 「……そろそろお開きとしよう」 望む者全員がカミュの体を味わい尽くしたと見て、アフロディーテが言った。 彼とシュラ、そしてデスマスクがカミュを囲んだ。その体は床にうち伏し、死んだように動かない。 「では。我らが素晴らしき”女”、アクエリアスのカミュに乾杯」 「乾杯!」「乾杯!」 あちこちでグラスを打ち合う音がする。 「乾杯…」 三人はカミュの上でグラスを合わせ、そのまま酒を傷だらけの背に注いだ。 聖衣を着けたままの頭が、わずかに動いた。 「−−−ああ、そうだ」 立ち去りかけて、アフロディーテは振り返る。 「今日の記念に、わたしから贈り物をひとつ…」 言いながらカミュの傍らにかがむ。そして手にした真紅の薔薇を、その双丘へと差し込んだ。 「ああよく似合うよ。くく… −−−あはははは…」 まさに女のような高い声で、アフロディーテは笑った。 「……」 あまりのことに、ミロ達三人は目を向き、息を飲んだ。 「こいつは傑作だ!! いいぞアフロディーテ!」 「何て無様だ! 何という滑稽な!!」 デスマスクとシュラが次々と言い立て、腹を抱える。 「−−−あの野郎!! もう…」 今度こそ、ミロは殺気をもって飛び出そうとした。が 「うっ…! ぐ…」 その足は崩れ、体が折れる。 「ミロ!?」 両脇からアイオリア達が覗き込む。ミロは激しく嘔吐していた。 「大丈夫か…ミロ…」 「…う…」 胃液まで全て吐き尽くし、ミロは苦し気に呻いた。 警護の兵を残し、聖闘士達が退場していく。 「また追って沙汰致す。それまでそれぞれの宮で控えておれ」 アーレスの言葉が合図となった。 カミュは、うち伏したままだった。 剥き出しの臀部に咲く一輪の紅い薔薇。取り除く力も、除いてやる者もない。 「ミロ」 カミュの傍に近づいた時、アイオリアが小声で言った。 「いいか。このまま歩いて行け。カミュを見るな」 「…!?」 「声をかけるな。触れてはいけない。いいな」 「し、しかし…」 「大丈夫だ。カミュは必ず立ち上がる。だから、手をかけるんじゃない。今お前が何を言っても、何をしてもカミュには辛いだけだ」 「だが、俺は…。俺なら…」 「お前だから、辛いのだ」 「…!」 アイオリアの言葉が、ミロの胸につき刺さる。 「これ以上カミュに惨めな思いをさせるな。知らぬふりで行くんだ」 「……」 言葉を交わす内に、足は既にカミュを過ぎようとしていた。 ミロは、一瞬止まりかかる。 カミュの声が聞こえた。そんな気がした。 「……」 だが。ミロは歩み続けた。そしてとうとう振り向くことなく、大広間をあとにした。 |
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