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 屈強の人々が居並ぶ大広間。
その中央に黄金聖闘士、アクエリアスのカミュが立っていた。
 縄ひとつないものの、引き出された、という恰好で。彼は「罪人」だった。警護の兵も含め、壁際を埋め尽くす人、人。全ての目がカミュ一人に注がれている。
 そのカミュを取り囲むシュラ、デスマスク、アフロディーテの三人。
「何をぼけっとつっ立っている」
シュラが言った。手には太い鞭がある。
「罰を下そうにも、聖衣の上からでは意味がないではないか」
後ろから見守るミロの目に、揺れるカミュの髪が映る。
「黄金聖衣を取りたまえ。いや…一糸たりとも身につけていてはいけない」
伏し目がちに、アフロディーテがつけ加える。
「あ…あいつら…っ!」
スコーピオンの聖衣が音を立てた。両脇にはアイオリアとアルデバラン。少し離れて、目を閉じたままのシャカがいる。
「あいつら…雑兵共の前に肌を晒せと言うのか!!」
「ミロ…」
「体だけの罰ではないのか!? あいつら、カミュを貶めるつもりか!!」
「言うな、ミロ」
アイオリアは眉をひそめ、ミロに見るよう促す。カミュは既にマントを取り、ひとつひとつのパーツを外していた。
「カミュ…」
体の聖衣を全て取り去り、ヘッドのパーツに手をかけた時
「おっと、それはいい」
シュラが止めた。
「大切な頭を守るものだ。着けておけ」
「……」
言われた通りカミュはそれを残し、髪をはね上げてアンダーウェアを脱ぎ始めた。
 ミロは、拳を震わせる。後ろ姿のカミュを思い、きつく唇を噛みしめた。
「……」
あちこちで、感嘆の声が上がる。生唾を飲み込む音がする。
 流れる長い髪。しなやかで、なめらかな肢体。硬質な黄金の冠を留めただけに、それは一層なまめかしく見えた。
「これはいい眺めだ。いい格好だよ アクエリアス!」
デスマスクが声高に笑う。シュラとアフロディーテは目を交わし、ほくそ笑んだ。
「では…手をついてもらおうか」
言いながら、シュラは鞭で床を打つ。乾いた音が響いた。
「う…」
呻いたのは、ミロだった。
 カミュは膝を折り、四つん這いの姿勢を取った。その後ろに廻り、シュラは鞭を一閃する。
「そうら、おしおきだ カミュ坊や」
言葉と共に、カミュの双丘を打った。たちまち、赤い筋が走る。
「……っ」
カミュは声を殺した。背中がしない、顎が上がる。
 続いて二発、三発。支える腕ががくがくと揺れる。
「俺のエクスカリバーで肉まで裂かれん分、甘いと思えよ」
勢いを増して打ち続ける。白い臀部が、赤く腫れていく。
「無様だ。大の男が尻を打ち据えられるとは」
デスマスクが煽る。カミュはひと言も発しない。
 シュラの鞭は続く。血が、染み出していた。
 見守る目は、好奇が半分。哀れみが半分。
「く…」
それを観る余裕が、ミロには全くなかった。
「…ま。こんな処か」
一皮剥けたように腫れ上がった双丘を手ではたき、シュラは鞭をおさめた。
「こんなにして…」
代わって進み出たアフロディーテが言う。真紅の薔薇を一輪咥えている。
「痛みで感じなくなっていたら、可哀想じゃないか…」
「ほう?」
デスマスクとシュラは、首を傾げてみせた。
「何をするつもりだ アフロディーテ」
「ふふ…」
笑みを浮かべ、カミュの双丘に手をかける。
「光栄に思いたまえ、カミュ。このピスケスのアフロディーテが…」
続く言葉に、周囲は驚愕した。
「君を…”女”にしてあげる」
「……!!」
弾かれたように、ミロがアフロディーテに掴みかかった。だが、止める手はない。アイオリアとアルデバランも同様に飛び出していた。
「ア…アフロディーテ!! 貴様、やっていいことと悪いことが…!」
「ミロの言う通り。いかに何でも行き過ぎだ」
「そうだ、控えよアフロディーテ!!」
口々の言葉に、アフロディーテは全く動じない。
「教皇!」
それは、アーレスも同じだった。
「お止め下さい アーレス教皇!」
アイオリアが言上する。
「”女”となってしまえば生涯慰み物としか生きられない。それを…黄金聖闘士のカミュに施すおつもりか!」
三人の目がアーレスに向く。その中、掴まれた手を払い、髪をふわりと撫で上げて
「これは異なことを…」
アフロディーテは言った。
「殺さなければ何をしても良い…そうでしたな教皇」
アーレスは黙って頷く。
「…馬鹿な! だからと言って…」
 その時
「ミロ」
手をつき、這ったままのカミュが言葉を発した。
「口を出すな」
「カミュ…!?」
「……」
アイオリアとアルデバランは顔を見合わせる。
その末、苦い面持ちのまま退いた。
「アイオリア! アルデバラン!!」
二人に、ミロの怒りが向けられる。
「許すのかお前達!? こんな仕打ちを!」
「やめろ、ミロ」
「ふざけるな!! 俺は…」
「やめろと言うんだ!!」
二人は強くミロの腕を引いた。
「わかっている。我々とて…はらわたが煮えくり返る思いだ」
「ならば…」
「しかし、カミュ殿は承服した。これ以上何が言える」
「アルデバラン…!」
すがるようなミロの瞳が揺れる。
「一任した我らに、止めだてする権利はないのだ」
アイオリアが、きっぱりと言った。
「……くっ!!」
ミロは壁に拳を叩きつけた。音に続いて、石の破片がばらばらと崩れ落ちた。

 一同が息を詰めて見守る中、アフロディーテはカミュの双丘を抱えた。
「では…」
マントで局部を覆い、ぐいと腰をつき出す。
「う…っ!」
カミュから、殺し続けた声が上がった。
「ここに剣を受けるのは初めてか」
アフロディーテは泣きぼくろの下に笑いを浮かべる。
「それにしては、よく飲み込む」
「あ…」
カミュの肘が折れる。垂れ下がった髪が、磨き上げられた床を掃く。
「ほら…どんどん入っていくよ…」
言葉と共に腰を揺する。手足はもとより、カミュの全身ががくがくと震える。
「ずいぶんと悦んでいるようじゃないか」
デスマスクは脇に回り、アフロディーテのマントをはね上げた。
 手を差し入れ、カミュのものを露呈する。それはアフロディーテからの刺激で、半分まで吃ち上がっていた。
「皆の衆。とくと見るがいい、この見苦しさを! こいつは金の聖衣の下に、このような浅ましいものを隠していたのだ」
言いながら、先端を指でぴんぴんと弾く。
「そこな兵共。もっとこっちへ来い。近くで見物してやれ!」
警護の兵達は、顔を見合わせる。その表情は、戸惑いだけではなかった。
「どうした。遠慮することはない」
尚も促され、恐る恐る数名が間近まで歩み寄った。
「−−−せっかくのギャラリーだ。応えてやれ、カミュ」
上からはシュラが、カミュの髪をぐいと引いた。顔が上向かされる。
「う…」
「喜ぶ顔を拝ませてやれ。とり澄ましたお前が乱れる様は、良い見ものだ」
「……っ!」
カミュは激しくかぶりを振った。熱い息と共に、汗が散る。
「どうした。不服か」
「−−−声援が足りぬようだよ 皆さん」
規則的に腰を動かし、アフロディーテが言い添える。
「聞いての通りだ。兵共よ、声をかけてやれ」
デスマスクはカミュのものをしごいている。
 三人の黄金聖闘士の言葉は、雑兵達には強い威となった。
「なやましい限りで…本当に」
「いやいや。目の保養であります」
「これほどとわかっておりましたら、いくらでもお相手しましたものを」
口々に言う。底にはざらりとした嘲りが含まれた。
 更には後方から
「いいぞアクエリアス! この色気違い!!」
「もっと腰を振れ! 声を上げろ」
「素直によがってみせろよ。感じてるクセに」
白銀聖闘士達の口汚い罵りが飛んだ。
「く… あ…あ!!」
後ろをアフロディーテに攻められ、男根はデスマスクに弄ばれる。
その上、シュラにもとどりを捕られ、羞恥を隠すことさえ許されない。
 全てを晒されてカミュは呻き、かぶりを振るしかなかった。
「……」
声もなく立ちすくむアイオリアとアルデバラン。そして
「−−−何をしている」
壁を向いたままのミロに、アーレスが言った。
「目をそむけるな。よく見るのだ」
「……」
「ミロ」
「…お許しを…」
ミロの声はか細く、震えている。
「ならぬ。そなた達はアフロディーテらに委任したのだ。言い換えれば、あれはそなた達のおこないだ」
「……!」
ミロは愕然とし、目を見開いた。
「ミロ…」
その肩に、アイオリアが手をかける。
「教皇の言う通りだ。我々は見守ってやらねばならん」
「し… しかし…」
「それが…カミュに何ひとつしてやれなかった、俺達への罰なのだ」
「…。アイオリア…」
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